全失語 (total aphasia)
殆ど全ての言語機能が著しく障害がされている。重度のブローカ失語とウェルニッケ失語が合併した類型である。患者は2、3の語を話す(残語)のみで、重度の言語表出、言語認識の障害を示す。書字言語も失われる。しかし、全失語といっても、全ての言語機能が完全に廃絶するわけではない。ベンソンは表出面で2、3の語を組み合わせる、一つの語を抑揚を変えて用いるなどにより最小限のコミュニケーションが可能な症例を報告している。ムーアらは全失語で比較的保たれるものとして書字機能をあげ、文字の認識は音声の認識に優るとしているが、フーバーはむしろ文字認識が悪いと述べている。ペックらは自発話に比べれば復唱はよいこと、ブローカ失語と異なりイントネーションはよく保たれていることを指摘している。全失語はそのままで経過することは少なく、多くは症状の改善とともに、他の類型に移行する。特に、ブローカ失語になるものが多い。半側運動麻痺、半側体性感覚障害は殆ど必発である。半盲も存在する。