発話:流暢
復唱:不良
聴理解:良好
リヒトハイムが理論的にその存在を想定した類型である。
伝導失語の自発発話は流暢で文法的誤りも認められないが、錯語、特に字性錯語が顕著である。
患者はこれを訂正しようと言い直しを繰り返すため、発話はしばしば中断される。
しかし、基本的には構音障害はない。
言語認識は良好である。
復唱の障害は最も特徴的症状で、自発発話、言語認識に比して著しく劣る。
誤りは字性錯語が多く、特に音韻の置換が多い。
音韻学的に類似した音素への置換が最も多く出現する。
文章の復唱では文章構造が複雑なものほど誤りやすい。
患者は発話の誤りに気づいて言い直しをするため、復唱はしばしば中断される。
発音を修正しながら目標に近づく「漸次接近」(ゆきだるまの復唱で、ゆきまむ→ゆきだぬ→ゆきだぬま→ゆきだるま)が認められる。
喚語も多少障害される。
患者は分かっているが言えないと訴える。
書字、読字も障害されるが必発症状ではない。
音読では字性錯読が生じ、書字では字性錯書が生じる。
漢字より仮名で障害が著しい。
運動麻痺、視野障害がしばしば認められる。
失行も認められるが頻度は少ない。
伝導失語で言語短期記憶(VSTM)の障害が存在することは事実であるが、それは伝導失語以外の失語にも認められ、伝導失語に特異的とは言えないとする報告が少なくない。
すなわちVSTMの障害があれば必ず伝導失語の症状を呈するとは限らない。
さらに伝導失語でしばしば認められる自発発話の字性錯話はVSTM障害では説明困難である。
しかしVSTM障害があれば、結果として当然復唱は障害される。
もし、VSTMが選択的に障害された場合、他の言語機能に比して復唱が著しく障害されることは明らかである。
伝導失語における字性錯語と復唱障害の機序は分けて考えるべきである。
伝導失語は単一ではなく、①VSTMの障害によるもの、この場合復唱障害に比して字性錯語は顕著ではない、②いくつかの音素をまとめて一つの単位として出力することの障害によるもの、この場合復唱障害と字性錯語が同程度認められる、の2類型があると言われてる。