スキップしてメイン コンテンツに移動

下肢関節拘縮 (Lower limb joint contractures)

下肢関節拘縮 (Lower limb joint contractures)
変形性関節症、不動性の拘縮、大腿骨頚部骨折後、関節リウマチなどの疾患では股・膝関節が屈曲拘縮、足関節が底屈位(尖足位)拘縮を起こしやすい。

○股関節拘縮
屈曲拘縮 : 著しい股関節屈曲拘縮により可動域が過度に制限された場合、骨盤の前後方向への動揺が大きくなる。拘縮側の遊脚期前期では腰椎の前弯、遊脚期後期では腰椎の後弯が生じ、さらに骨盤の水平面での回旋運動によって拘縮側下肢を前方に振り出す代償運動が認められる。
内転拘縮 : 拘縮側の下肢が骨盤の傾斜により見かけ上の短縮(仮性短縮)を生じる。拘縮側の立脚期では踵を上げるつま先立ちとなり、脚長差の存在する短縮側と類似した異常歩行となる。

○膝関節拘縮
屈曲拘縮 : 屈曲拘縮が30°以下の歩行では、速度が遅ければ代償運動によって目立った異常歩行は観察できない。しかし速度を早くしたり、屈曲拘縮が30°以上になると、立脚期を通して踵での接地が困難となり、著しい下腿の前傾を認め、脚長差の短縮側と類似した異常歩行となる。
伸展拘縮 : 拘縮側下肢の遊脚期において分回し歩行、および健側下肢の立脚期で伸び上がり(つま先)歩行が出現し、拘縮側下肢の立脚期で踵接地の衝撃が強くなる。
外旋位拘縮 : 可動域が極度に制限されると、拘縮側下肢の遊脚相に骨盤の前後動揺が大きくなる。拘縮側の股関節の運動は腰椎と健側股関節によって代償される。健側股関節を中心とした回転運動によって拘縮側下肢を前方に移動させる。

足関節拘縮
底屈位拘縮(尖足) : 拘縮側の遊脚期では、股・膝関節を過度に屈曲させるため、膝・足が高く上がり、外転・分回し歩行となる。さらに立脚期ではつま先から接地し、常につま先歩行する尖足歩行(equine gate)がみられる。これを鶏歩行(steppage gait)と呼ぶこともある。踏み切り時の推進力低下のため歩行速度が遅くなる。この状態が長時間継続した場合は反張膝の傾向が現れる。
背屈位拘縮 : 拘縮側の立脚期に踵のみが接地し、立脚期の短縮と立脚後期のつま先離地時に踏み切りの力が弱くなる踵骨歩行(calcaneal gate)が生じる。

http://ptreport119.web.fc2.com/izyouhokou.pdf
より

アーカイブ

もっと見る

このブログの人気の投稿

眼球運動障害 瞳孔不同 対光反射消失

眼球運動の障害や瞳孔不同、対光反射の消失は、患者が重篤な状態に陥っている可能性を示す。脳死判定基準の中にも、瞳孔の散大と固定、対光反射の消失がある。たとえば、脳幹出血を起こすと眼球運動の中枢障害による正中位固定や、交感神経障害による著しい縮瞳( pinpointpupil )などの特徴的な眼症状を示す。瞳孔径や対光反射の異常は、出血やヘルニアの早期発見につながるため、重要な観察ポイントとなる。 眼症状の観察 対光反射の有無は、光を当てた側の瞳孔反射である直接対光反射、反対側の間接対光反射で評価する。 反射の程度は迅速・緩慢・消失の三段階で示す。 さらに、眼球偏位や瞳孔径の異常がないか観察する。 病側の眼瞼下垂は動眼神経麻痺の可能性があり、眼球運動の異常は動眼、滑車、外転神経の異常を示す。これらは、中脳や橋、頭蓋底部の異常のサインとなるため、重要な観察ポイントとなる。 観察の注意点 瞳孔径 瞳孔径は周囲の光量に影響を受けるため、夜間消灯後は、日中と同じく照明を点け、光に慣れてから観察します。 対光反射 対光反射には直接反射・間接反射があり、耳側から光を入れる必要があります。 LED などの強い光や、長時間光を当てることがないようにします。

標準失語症検査(SLTA)

標準失語症検査(SLTA)とは 標準失語症検査(Standard Language Test of Aphasia :SLTA)は、日本で最もよく用いられている総合的な失語症検査です。 一般的には「SLTA」と呼ばれることが多いです。 開発者は、失語症研究会(現在は日本高次脳機能障害学会)です。 基礎的な研究は1965年に開始され、最終試案は失語症者200人・非失語症者150人のデータをもとに標準化されて、1975年に完成版が出版されました。 標準失語症検査(SLTA)の概要 目的 失語症状の詳細な把握と、失語症に対するリハビリテーション計画立案の指針を得ることを目的としています。 構成 「聴く」、「話す」、「読む」、「書く」、「計算」の5側面、計26項目の下位検査で構成されています。 所要時間 所要時間は失語症のタイプや重症度によりますが、60~120分程度です。場合によっては120分以上かかることもあります。 一定数の誤答が連続した場合や一定の得点に達していない場合には中止基準を設けて、被検者の心理的負担に配慮しています。 特徴 6段階評価 :大部分の検査項目において反応時間やヒント後の反応に基づく6段階評価が採用されており、症状を詳細に把握することができます。わずかな変化を知ることができ、この情報をリハビリテーションに生かすことができます。正誤2段階の評価に換算して大まかな成績を表示することもできます。 普及度の高さ :日本で最も一般的な失語症検査であり、多くの臨床家が本検査に精通しています。転院時にも他施設との情報共有がしやすく、本検査の反復使用によって経時的変化がわかります。 刺激の統一 :SLTAでは、できる限り同一の単語や文を刺激に用いています。被検者内でモダリティ間(「命令に従う」課題を口頭で聴覚呈示する場合と文字で視覚呈示する場合等)、漢字・仮名間(同じ「読解」課題で単語を漢字表記する場合と仮名表記の場合等)の成績比較をすることができます。 「話す」側面の充実 :動詞の表出をみる「動作説明」や4コマまんがを用いた「まんがの説明」等独創的な検査項目があります。 記録用紙 下段は項目ごとの6段階評価の結果の記入欄、上段は正答率(完全正答の段階6および不完全正答の段階5)を折れ...

兵頭スコア 嚥下内視鏡所見のスコア評価基準

兵頭スコア 嚥下内視鏡所見のスコア評価基準 スコア合計:    点 ① 喉頭蓋谷や梨状陥凹の唾液貯留  0:唾液貯留がない  1:軽度唾液貯留あり  2:中等度の唾液貯留があるが、喉頭腔への流入はない  3:唾液貯留が高度で、吸気時に喉頭腔へ流入する ② 声門閉鎖反射や咳反射の惹起性  0:喉頭蓋や披裂部に少し触れるだけで容易に反射が惹起される  1:反射は惹起されるが弱い  2:反射が惹起されないことがある  3:反射の惹起が極めて不良 ③ 嚥下反射の惹起性  0:着色水の咽頭流入がわずかに観察できるのみ  1:着色水が喉頭蓋谷に達するのが観察できる  2:着色水が梨状陥凹に達するのが観察できる  3:着色水が梨状陥凹に達してもしばらくは嚥下反射がおきない ④ 着色水嚥下による咽頭クリアランス  0:嚥下後に着色水残留なし  1:着色水残留が軽度あるが、2~3回の空嚥下でwash outされる  2:着色水残留があり、複数回嚥下を行ってもwash outされない  3:着色水残留が高度で、喉頭腔に流入する 誤嚥:なし・軽度・高度 随伴所見:鼻咽腔閉鎖不全・早期咽頭流入・声帯麻痺