回想法(認知症者に対する訓練)





回想法(認知症者に対する訓練)

 本来回想法は自らの人生を系統的に振り返り,これまでの出来事を再評価・統合し,人生の意味を見いだし人格の統合を目指すものです。
 著明な健忘を呈する認知症高齢者でも、遠い過去の出来事はよく覚えていることが多いため、本法は参加者から具体的な反応を得やすく導入しやすいです。
 認知症高齢者に対する回想法では、参加者相互の刺激や共感、回想の肯定的受容などの心理的働きが、精神症状・行動障害の軽減、情動の安定、対人関係の賦活などの治療的効果を生みます。
 具体的には「もう一度会いたい人」「自分の故郷について」「もう一度行ってみたいところ」などといったテーマに沿って、それぞれの過去の体験につき話をしてもらいます。参加者間の相互的なやりとりも重要で、幼少期から近い過去に至るまで回ごとに関心時期を設定し、さまざまな小道具や手がかり(写真,衣類,食材など)を用います。
 しかし,過去の生活史を賦活することでかえって情緒的な過剰反応を引き起こしたり、回想した過去の世界と現在とを混同して見当識の混乱が増す場合があるため、注意が必要となります。