息こらえ嚥下

息こらえ嚥下(法)< Supraglottic swallow>(声門閉鎖嚥下法、声門越え嚥下法)


嚥下中の誤嚥を防ぐと同時に、気管に入り込んだ飲食物を喀出する効果がある。嚥下動作前と嚥下動作中に、声帯レベルでの気道閉鎖を確実にするために工夫された手技である。

主な対象者


嚥下中に誤嚥をきたす患者。適応となる嚥下障害は声門閉鎖の遅延または減弱あるいは咽頭期嚥下の遅延を認める症例。

具体的な方法


飲食物を口に入れたら、鼻から大きく息を吸って、しっかり息をこらえて、飲食物を飲み込み、咳払いをする、あるいは口から勢いよく息を吐き出す。意識的に息こらえをすることにより、嚥下動作直前から嚥下動作中に声門を閉鎖する。遅延の間も声門を閉鎖する。

強い息こらえ嚥下法、喉頭閉鎖嚥下法< Super-supraglottic swallow>


これは嚥下動作前、嚥下動作中に、喉頭前庭部での閉鎖を確実にするために工夫された手技である。適応となる嚥下障害は、喉頭前庭から仮声帯部の閉鎖の減弱を認める症例である。強く息こらえをすることにより披裂軟骨は前方に傾斜し、嚥下動作直前から嚥下動作中に喉頭前庭から仮声帯部の閉鎖を促進する。

< Pseudo-supraglottic swallow> 基礎訓練として、食物を使わずに「大きく息を吸って空嚥下をし、その後息を吐き出す」方法。

注意点など


ポイントは鼻から息を吸い、口から吐き出すこと。飲食物を口に含んだままで息を吸うと、気管に吸い込む危険がある。口腔内に飲食物を保持できない患者は不適応である。

* 名称について:本法は supraglottic laryngectomy 手術後に声門レベルで誤嚥を防止する手技として開発され、Logemann により命名されている。指導法として、「息をこらえる」ように患者に指示することからBreath-hold maneuverとも呼ばれ、本邦では「息こらえ嚥下(法)」と呼ばれることが多い。しかし、息をこらえただけでは声門が閉鎖しない人も多く、本法の目的が声門閉鎖ということであれば、「声門閉鎖嚥下(法)」と呼ぶほうがよいのではないかという意見もある。なお、強い息こらえ嚥下法、喉頭閉鎖嚥下法< Super-supraglottic swallow>も含めて随意的気道防御法(手技)voluntary airway protection と呼ばれることもある。

日本摂食・嚥下リハビリテーション学会より参照。