東大など、食事摂取時の複雑な舌運動を定量化できる3次元力センサを開発
東京大学(東大)は、口蓋に貼り付けられる小型極薄の3次元力センサを開発し、実際に計測して食事摂取時の複雑な舌運動を定量化したことを発表した。東大IRT研究機構の下山勲教授らと、大阪大学、TOUCH、明治による共同研究で、成果は2月2日までフランスで開催されている国際学会「MEMS2012(The 25th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems)」および2月23日・24日に開催予定の「第27回日本静脈経腸栄養学会」で発表が行われる。
人は、飲料や食品を飲み込む際に、舌を口蓋に押し当てて、飲料や食品を咽頭および食道へ送り込む。そのため、嚥下動作のメカニズムのカギとなる舌の動きの計測を行うためにさまざまな方法がとられてきた。従来の舌の動きを計測する手法としては、人体への影響が大きい刺入電極による筋電位計測法や、像がぼやけてしまうX線観察法、口蓋に貼り付けた圧力センサシートを用いて舌が口蓋に接触する圧力を計測し接触位置を求めて舌の運動を推定する方法などがあった。
今回の研究では、口蓋に貼り付けられる小型極薄の「せん断力」を計測することが可能なセンサを開発(画像1・2・3)。口蓋に対し、舌を前後左右にすり動かす時に生じるせん断力を直接的かつ非侵襲に計測できるようにしたというわけだ。その結果、従来の圧力センサシートなどではわからなかった、嚥下時の舌の3次元的な運動の活動量が判明したのである。
センサ表面は、体内に入れても安全なシリコンゴムで構成されており、内部にシリコンピエゾ抵抗カンチレバーが埋め込まれ、シリコンゴムの変形を3次元的に計測する仕組みだ。センサのサイズは7mm×6mmと小型で、厚さも0.8mmと薄いため、人間の咀嚼嚥下動作を阻害することなく、舌の動きを計測することができるのである。
飲料水を嚥下した際に舌が口蓋に及ぼす、前後方向のせん断力および左右方向のせん断力を計測し、それらのセンサ出力値を積分した値を舌の活動量とし、官能評価と比較した結果、飲み込みやすいと評価された食品は、そうでない食品と比べて前後方向、左右方向ともに、舌活動量が有意に小さいことが判明したという。
また、舌の左右方向の活動量に着目すると、通常の飲料水の場合、水が口腔内で拡散するために、舌が左右に細かく動いて水を舌の上にまとめるために舌活動量が大きくなるのに対して、増粘飲料水の場合は、舌の上で水がまとまって広がらず、左右の活動量が少なくなることもわかった。
このような飲み込みの際の3次元的な舌の動きが定量的に把握できると、従来の圧力センサシートなどの計測ではわからなかった、口腔内での食物の流れや食事摂取時の複雑な舌の運動を3次元的にとらえることができ、嚥下障害を有する高齢者や小児に向けた食品開発に役立つと、研究グループではコメントしている。
マイナビニュースから参照
http://s.news.mynavi.jp/
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